校長先生最後の授業(大泣きした話)




前回の続きです。

初めてやってきた田舎で、知り合いなんかは誰もいない中、校長先生には本当によくして頂きました。

 

「おう、蕎麦食いに行くぞー!」

校長先生との思い出の中で、一番印象に残っているのが「蕎麦屋」事件です。

これ、妻以外には誰にも話していないんですけど、面白かったので書いておきます。

ある時、相変わらず庭に出て花や木を植えたりしていましたら校長先生がやってきました。

校長先生は、元々この地域の人なんですが、定年後は奥様のご実家で暮らしてるそうで、たまにしか来ないみたいなんです。

で、たまに来た時に、芝生の様子とか見てくれたりするのです。

超・いい人です。

 

ある時、「おう、うまい蕎麦屋があるんだ、おごってやるから行くぞ!」とのこと。

「はい、わかりました、行きましょう!!」

で、車で10分くらいしたところに蕎麦屋がありました

で、校長先生、店に入るなり、「おう、いつもの蕎麦2つ頼む」とオバチャンにリクエスト。

今日は弟子みたいなのがいるからか、オバチャンもビックリしたんですかね。

「そ、そばでいいですか? そば2つですよね?」

って何度も聞き返しています。

まさか、いつものを知らないことはないと思いますが。

校長先生も、

おう!」

そうそう、蕎麦だよと。

そして、しばらく校長先生と雑談しながら蕎麦を待ちます。

 

「いつものって言ったじゃねえか!」

お店はお昼時で、近くに役所や病院があるからか、そこそこ込み合った感じです。

「ここは、そばがうまいんだよ、ちゃんと作ってるんだ。 気に入ったら一人で行けばいいからな。」

「そうなんですね、ありがとうございます。ここなら近いですしね。」

そうか、おいしい店を紹介してくれたんだなあ、いい人だなあ。

でも、オバチャン大丈夫かな、ウドンが出てこないかな?

昼時だし、よくわかってなかった感じだし。。。

しかし、そんなに待たずに、無事「蕎麦」が出てきました。

よかった、蕎麦が出てきて。。。苦笑

 

しかし、校長先生、固まります。

「これじゃねえ。。。」

「え?どうかしたんですか?」

「これじゃねえよ。。。」

あらら、蕎麦なのに、なんで?

「え、違うんですか、でもおいしそうですよ?」

はやく食べたい自分。苦笑

「これじゃねえ、ちょっと待ってろ。」

やばいです、なんか怒ってます。

そして、オバチャンを呼びます。

「おい、いつものって言っただろ!! なんだこれ、ちがうよ!!」

おばちゃん、やっぱり「いつもの」が何なのかわかってなかったようです。笑

「えーと、いつもの? えーと。。。」

たまらず校長先生、「誰が温かい蕎麦なんか頼んだ! 冷たいやつだよ!」

オバチャン平謝り。

「いままで、オレがこんな暖かいそばを食べたことあるかよ!」

オバチャン平謝り。

しかし、オバチャン 「知らんがなあ。」 みたいな顔。笑

やばい、面白すぎる!

格好良く「いつもの」って言って、違うものが出てきた! 

コントだ!

あぁ、笑いそう、でもなんとかこらえました。

しかし、きっと顔はニヤニヤしてたでしょうね。

腹減ったし早く食べたいので、「先生、でも、これも、かなりおいしそうですよ!!」なんて言ってみたり。笑

そしたら、オバチャン平謝りに続いて、「冷たいの持ってきます」と言いましたが、そこは校長先生。

「まあ、暖かいのもうまいからな、今日はこれでいい。」

おさまってよかったです。

と、こういうキャラの先生なので、父親というか、そういうイメージなんですよね。

口は悪いけど、憎めない、そして尊敬できる人って感じです。

いや、ほんと、暖かい蕎麦もおいしかったですよ。ありがとうございました。笑

 

しばらく田舎から姿を消す自分

さて、田舎に引っ越して1年くらいたった時でしょうか、幸いなことに仕事が忙しくなってきたんです。

今ほどではないですが、いろんな経営者やお客さんと会ったりすることが多くなりました。

東京から大阪まで、その範囲はとても広く、自分でも昔はフットワーク軽かったなぁと感心するほど。

そうなると、田舎から都内とかに毎回1時間も2時間もかけて行くのがすごく面倒くさくなってきます。

車なんかで行くと、渋滞やらで3時間は確実にかかります。

これは、バカだなと思って、都内に事務所を借りたんです。

そしたら、やっぱり、都内の事務所の方が居心地が良くなってしまって、田舎を放ったからしにしちゃったんです。

そうですねえ、かれこれ「1年」くらいは放置したと思います。

その間、近所の人の顔さえしばらく見てませんし、校長先生にも当然、お会いしてません。

しかも雑草生え放題でお隣さんはご立腹。

しかし仕事は楽しいし、だんだんと田舎に帰るのも面倒くさくなってくると、もったいないから家を売っちゃえと。。。汗

そう思って、その時に知り合ったビジネスパートナーの不動産屋さんに頼んで、売りに出しちゃったんです。

いちおう「ご近所さんの目もあるから、こっそり売ってください。」って頼んだんですけどね。

そしたらなんと、家の周りにロープを張られて、「売家」とか赤字でデカデカと貼りやがって、さあ大変!

その人、不動産屋をはじめたばかりの素人同然の社長だったので、「こっそり売る方法」を知らなかったみたいなんです。苦笑

「すぐ、外してください! そして、もうけっこう!」 と、マジギレして断りました。

 

出て行ったのは校長のせいじゃないの?

さて、その頃、「売家」とか貼っていたのを見ちゃった田舎のご近所さんの間では、いろんな噂が飛び交いました。

なかでも、「誰かに嫌なことされたんじゃないか?」、という説が有力となっていたようなのです。

で、そのやり玉に挙げられたのが、校長先生だったそうです。

「あんたが、庭がどうだとか、ちょっかい出したり、なにかウルサイこと言ったりするから嫌になっちゃったんじゃないの?」、みたいに校長先生を責めた人もいたとか?

これは、マズイ!と思いました。

感謝こそしても、校長先生が嫌になったなんてありえません。

しかし、そうこうしているうちに、仕事の方も、あちこち人と会ったり出向いたりしなくても安定的に入るようになってきました。

やっぱり家を売らなくてよかったです。

「田舎の活動を増やそう」と心変わりしまして、都内の事務所を引き払い、再び田舎にこもるようになりました。

となると、なんとか校長先生に、「それは違いますよ」って言っておかないといけません。

しかし、その機会は訪れませんでした。

なぜなら、一度コミュニティを離れてしまった僕は、もうご近所さんに合わせる顔がなくて、ほとんど行事に参加しなくなってしまったんです。

唯一参加するのは草刈りとドブさらい(掃除)だけ。

これはさすがに出ないと本気で周りのひんしゅくを買っちゃいますからね。

ただ掃除には、たまに校長先生も来てたんです。

でも、案の定、もう目も合わせてくれないですね。苦笑

「あ、先生、こんにちは。」なんて、何もなかったように話しかけても、「おう!」で終わりです。苦笑

あぁ、やっちゃいましたねえ。。。

 

校長先生に(心の中で)キレる!

そして、しばらくして妻と結婚することになりました。

さすがに「結婚したら地域行事には出ないと周りからひんしゅくを買うよ」的なアドバイスをご近所さんから頂き、重い腰を上げることにしました。

そして、毎月の集会から、季節行事から、あれこれを顔を出すようになりました。

そして、あれは祭りの準備の時でしたでしょうか。

この時は校長先生もお手伝いに来てたのです。

相変わらず、ほとんど会話してません。

で、一息ついたところで、みんなで休憩していたときに、校長先生が、あの時以初めて話しかけてくれたんです。

みんなの前で一言。

「おう、子供はまだか?」

ガクッときましたが、話しかけてくれたことは素直にうれしかったです。

ただ、その時はもう夫婦ともに40歳に近かったですから、もう半分以上あきらめている時でした。

「はい、そうなんですよー。」

「なんだよ、どんどん作らないとダメじゃねえか。」

「あはは、スミマセン。。」

「あはは、じゃねえよ、俺が作り方教えてやろうか。ワッハッハー。」

ここで、不覚にも「カチン」ときちゃいまして。。。

それでもまだ子供のことを言ってくるので。

「いやいや、もうほんと、その話はいいですって!」

と、怒ってはいませんが、ちょっとだけ大きな声を出してしまいました。

校長先生も、声の変化に気が付いたのか、そこで話は終わりました。

薄情にも田舎を捨てようとした自分に、わざと嫌なことを言っているのかなと思い、せっかくの機会でしたが、嫌な感じになってしまいました。

 

ついに引っ越しの時、お隣さんから衝撃な話を聞く

さて、そこから何年か過ぎて、自分にも小さな「役」も回ってきました。

そして、前回のブログに書いたエピソードが起こります。

色々考えて、引っ越すことに決めました。

最後にご近所さん全員に挨拶に行くことにしました。

ですが、校長先生にはなんて言おうかなと、かなり迷いました。

でも、その時には、子供の話とか、その辺のわだかまりとかはありませんでした。

まあ、それほど尾を引くような大した話でもないですしね。

ただ、ほとんど会話はしてませんでしたからね、その意味で気まずいなあと。

あれから校長先生も、昔みたいに庭にひょいっと入ってきて、花木の話をすることも、そばを食べに行くこともなかったですからね。

 

そんな時、妻がお隣さんから、こんな話を聞いたよって言ってきました。

なにやら校長先生が、僕たち夫婦のことをいつも気にしてくれてるって言う話でした。

こんな、田舎の小さな部落で、どんどん人も減って、あんなちゃんとしたやつらが来て本当に良かった。

だいじにしてやらないといけない。

それなのにまだ子供がいないってのは残念なことだ。

子供ができたらみんなで面倒見てやらないとな。。。

それを聞いて、またしても、なんて自分は浅はかなんだ!と思いまいた。

そういう思いがあったから、祭りの準備の時に、冗談っぽく、子供の話をしたんでしょうね。

そして、これを聞いて、涙が出そうになりました。。。

 

でも、結局引っ越してしまう自分たち夫婦。

こんな話を聞いたら、校長先生になんといってお別れしたら良いのか。。。

 

でも先に当時の誤解だけ解いておこう!

色々考えたんですが、かなりお世話になった人なので、いきなり最後にサヨウナラは避けようと思いました。

最後の挨拶の前に、一度話をして、あの時の誤解だけでも解いておこうと。

 

あの時は仕事が楽しくて、都内の事務所に入り浸りだったんですよと。

決して田舎が嫌だとか、とくに校長先生が面倒くさいから逃げてきたなんてことは、まったくないですよと。

近所の誰がそんなことを言ったのか知りませんが、全くの誤解ですよ、と。

 

それだけ伝えようと思いました。

そうすれば、「なんだよ、いきなり、どうした?」って聞いてくるはずだから、その時にもしも言えたら「実は引っ越すんです」と伝えようかなと。

そういう作戦で行こうと校長先生のご自宅に昼間に一人で向かいました。

なんだか、すごく緊張します。

校長先生が出てこられて、ちょっとお話がありますって伝えたんですが、そのあとあまりよく覚えてないです。苦笑

というのも、口を開いた瞬間に、涙があふれてしまって、なんだか声にならなかった記憶があるんです。

今思えば、40歳前のおっさんが、まるで子供ですね、かなり恥ずかしいです。

でも、「自分たちのことを気にしてくれていたんだ」ということを思うと、涙が止まらなくなってしまったんです。

でも何とか伝えました。

本当に感謝してます、誤解だけは解きたかったんですと伝えて、先生も、そうか、わかったと。

そしたら、先生も涙を流しているの見てビックリしたのか、話をさっと切り替えて、ところで、芝生の雑草はどうしてるんだ? という話になりました。

そこから、楽しく色々と話をして、その場は立ち去りました。

きっと校長先生も、「いきなり来て、なんだよあいつは?」 って思ったことでしょうね。

結局、引っ越す話はできませんでした。

 

そして翌日、最後の校長先生の授業です

さて、結局引っ越すことを伝えられなかったので、ちょっとモヤモヤしています。

この段階で引っ越すことを知っているのは、最初から最後まで面倒を見てくれた一番信頼しているお隣さんだけです。

校長先生には、どうやって伝えようかと思っていたら、夕方くらいでしょうか、「おう!」と校長先生が庭にやってきました。

あれ、どうしたんだろう、もしかして、引っ越すことがばれた!?

と思ったら、「昨日の話の続きだ!」 とのこと。

 

じつは、泣きべそをかいて話をした後、芝生に生えた雑草をどうやって刈るかという話になったんです。(すごいギャップですね。苦笑)

その時に、刈払機の丸い刃(カッターの部分)を外して、ヒモでできたカッターを付けて刈ればいいよという話になったのです。

刃を回転させるのではなく、ヒモを回転させて草を刈るので、あたりがソフトです。

もちろん市販品です。

そうすると、ブロックやコンクリと土の際とか、すごく草を刈りやすいんです。

ほんと、おすすめです。

で早速、刃を外して、ヒモカッターに付け替えて、実演です。

もうね、ここまでくると、大変失礼ながら、校長先生をすごく微笑ましい感じで見てしまいましたよ。

ああ、これで最後なんだと。

でも、お別れの挨拶はなんて言おうかなと。。

 

お隣さん、いきなり引っ越しをバラす(苦笑)

1時間くらいでしょうか、その時は妻もいたんですが、草刈りの実演と、いろいろ話をしたりして過ごしました。

そしたら、それを見ていた、例の最も信頼しているお隣さん(おばちゃん)がやってきました。

「お、めずらしいね、みんなそろって、楽しそうだね」という感じで。

「いや、芝生の雑草をどうしようって昨日ウチに来たから教えてやってるんだよ。」と校長。

そしたら、お隣さん、言わなくていいのに言っちゃいました。

「教えてやるって、もう二人とも引っ越しちゃうじゃんよ。」

「引っ越し先は(仮住まいの)アパートだっていうんだから、庭なんかねえじゃないかよ、あははー。」

校長先生しばし、フリーズ。。。

「なんだよ、そうなのかよ、教えた意味がねえじゃねえかよ!」

僕はまたしても、涙が出そうでやばい感じになっています。苦笑

なので、妻とオバチャンと先生とで会話は続きます。

校長先生は、とても残念そうです。。。

もう何と言っていいか、申し訳なくて、「スミマセン」としか言えなかったように記憶しています。

でも、すごく空気のさわやかな、秋の終わりの夕方でしたねえ。

 

ちなみに、教えてくれたことは無駄にはなってないです。

あれから別荘を買ったときに、先生が教えてくれた方法で草刈りをしましたからね。

今の家は庭がないですけど、たぶん、1年後くらいには、草刈りしていると思いますよ。

なので、校長先生、本当にありがとございました!!